やが君 考察

やがて君になる (アニメ)の考察ブログです!

やがて君になる 7話 考察 感想

この記事ではやがて君になる7話の考察を行います。すでに多くの方が考察記事を公開していますが、十人十色の解釈がありどの記事も楽しく読ませていただきました。

筆者は普段ブログを書かないのですが、色々な解釈が共有されることで、やが君がより一層楽しめるコンテンツになると思い遅ればせながら記事を投稿することにしました。
(※アニメのネタバレ有です!アニメ最新話までの内容を含むので、未視聴の方は先に視聴することを強くお勧めします。)


「秘密のたくさん」(Aパート)

第7話のタイトルはAパート「秘密のたくさん」とBパート「種火」です。まずはAパートに関しての考察です。

沙弥香と燈子の距離

沙弥香は燈子への好意を自覚していますが、自分から伝えることはありません。また、燈子が本当は完璧な人物ではないと知りながらそれについて触れることはありません。詳しくは、後述するBパートのシーンで解説します。ここで注目したいのは、そうした燈子と沙弥香の距離感が窓の仕切りで表現されているのではないかという点です。本当にやが君ではカット一つひとつに意味が込められていますよね、大切にされている作品だと感じます。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

沙弥香は言いたいことがあっても踏み込みません。下の会話で燈子が嘘をついていることに明らかに気づいていながら、追及したりはしません。そんな沙弥香の距離を置く姿勢手を引っ込める演出で表現されています。こういう場面で、沙弥香の心にもやもやが溜まっていくんでしょうね…。


沙弥香「あの子のどこをそんなに気に入ってるの?」
燈子「だって生徒会の一年で女の子は小糸さんだけなんだし、仲良くしてて何か不思議?」

沙弥香「…そう」

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

燈子と侑の距離

燈子が沙弥香に対して演じている自分を見せることとは対照的に、侑に対しては素の状態で甘えます。どこまで侑に踏み込んだらそのまま(燈子のことが特別でない)でいてくれるのかとドキドキしています。ほんと、燈子ってずるいですよね(笑)。ちなみにどこまで踏み込んだら、という部分はミラーに映った止まれの標識で比喩表現されていました。沙弥香との距離感を目の当たりにした後だからか、侑と肩を並べて歩く時の距離がより一層近くに感じます。これが燈子にとっての特別な人との距離感なのでしょう。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

それぞれの秘密

タイトルにもある通り、Aパート全体としては登場人物の秘密に焦点を当てています。

それぞれの秘密に関して振り返ると、以下のようになっています。

:こよみや沙弥香に対して燈子先輩との関係を秘密に。燈子に対してかわいいと感じていることを秘密に。

沙弥香:燈子に対して好意を抱いているということを秘密に。

燈子:沙弥香に対して完璧でない自分や侑との関係を秘密に。

理子:都との関係を秘密に。

…秘密ばかりですね(笑)。

 

種火(Bパート)

続いてBパート「種火」の考察に入ります。

 窓の仕切りがまた絶妙な位置にありますね(笑)。沙弥香と燈子が隔てられているだけではなく、侑と燈子が同じ左側にいます。直接的な距離は沙弥香の方が近くにいるのに、実際には侑と燈子の方が秘密の関係であることを暗に示しているように感じます。繊細な演出ですね。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

 

沙弥香の心のもやもやとコーヒー

燈子が今まで類を見ないほどに誰か(侑)との距離を縮めるのを目の当たりにした沙弥香。これまで溜め込んでいた心のもやもやで胸が張り裂けそうになります。自室の沙弥香は、燈子は誰のものにもならないと自分に言い聞かせます。これは筆者の解釈ですが、コーヒーは沙弥香の心象風景を示すアイテムとなっています。沙弥香はブラックコーヒー派ですが、ブラックコーヒーを飲むことは苦い気持ちを飲み込む沙弥香を示していると考えられます。自室での場面では沙弥香が飲むシーンが意図的にカットされていますが、この時の沙弥香は寂しく張り裂けそうな表情をしていたのではないでしょうか。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会



意図的なカットをする演出

やが君では、直接的な表現をあえて控える演出が多くなされています。なぜこのような演出をするのか、筆者の個人的解釈を述べると、「直接的に表現しきってしまうよりも解釈の余白を残したほうが魅力的な作品になるから」ではないかと感じています。例えば、見返り美人図という絵画がありますが、これは振り返っている先に何が描かれているのか観る人によって様々だと思います。このように、描き切ってしまえばそこにあるものがすべてですが、余白があることで視聴者によって十人十色の作品になると思います。同様に、やが君も様々な場面で意図的に描き切らない演出がなされており、だからこそ様々な考察記事も生まれているのかなと思います。(あくまで筆者の解釈なので、制作の方が全く違う意図の可能性も大いにあります。)

 

大人な都と沙弥香とコーヒー

 燈子も侑と出会うまで癒しとなる存在がなく孤独でしたが、沙弥香もひとりもやもやとした気持ちを抱えていました。周りの人に対して大人らしく振る舞う沙弥香が頼ったのは、大人の都でした。都のカフェでおそらく初めて燈子のことを誰かに打ち明けた沙弥香。1杯目のコーヒーを飲む描写はカットされていますが、いつもの寂しい気持ちで飲むコーヒーとは違った表情だと思いました。次に、サイフォンと呼ばれる器具のフラスコで水が水蒸気となってコーヒーへと変わっていく描写がありますが、これは沙弥香の燈子に対する想い(水)が打ち明けられないことにより心のもやもや(コーヒー)に変わっていく様子を示しているのではないかと思いました。コーヒーが溜まっていく様子は沙弥香の心にあふれていく苦い気持ちと重なります。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

この後、空のコーヒーカップの中で2つの滴が落ちますが、直前の沙弥香の表情を見ると、滴は心の涙を示しているのかもしれません。ちなみに、「友人として」という言葉を発したタイミングで滴が落ちていますね…。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

都に心のもやもやを打ち明けた沙弥香。沙弥香が燈子に踏み込まない理由が2つ述べられます。1つは燈子が誰かの好意を受け入れるだけの余裕がないと知っていること。もう1つは、燈子のそばにいたいけれど、燈子に好意を伝えたら近くにいられなくなってしまうという不安。沙弥香は真面目なので、そばにいるために本当の気持ちを隠すことに対しても葛藤を抱えていたのでした。沙弥香の言葉を聞いて、都は沙弥香のことを「いいこ」と表現します。自分の気持ちよりも燈子のことを優先する沙弥香の優しさを考えての発言でした。それに対して、沙弥香は都に自分は優しさだけではなく、関係が壊れる恐怖から踏み込めないだけだと切り返します。コーヒーの波紋には、都がどう答えるか不安な気持ちが表れているかのようです。そして、それを聞いた都は以下の言葉を返します。

「だとしても 本当の気持ちを飲みこむのは 大変なことだよ」

沙弥香にとって、初めて自分の心の葛藤が誰かに理解された瞬間だったのではないでしょうか。7話冒頭で描写された中学生の頃の経験では、自分の心は誰にも理解されず打ち明けることもできないままでした。しかし都は沙弥香の心の辛さを感じ取ってくれたのだと思います。都の言葉を聞いた沙弥香の表情には驚きと同時に晴れやかさが感じられます。テーブルに落ちた水滴を拭う都の描写は、心で泣いている沙弥香の涙を拭ってくれた(なぐさめてくれた)ことを示しているのかもしれません。

そして、「いただきます」とサービスでもらった2杯目のコーヒーを、いつもとは違った表情で口にするのでした。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 

心の種火

エンディングでは、沙弥香の気持ちがモノローグ(独白)で語られます。Bパートのタイトル「種火」はいつか胸を破るかもしれない沙弥香の心のもやもやを示していたんですね。他の考察の記事でも触れられていますが、最後は廊下の黄色い直線で隔てられた燈子と沙弥香が平行(交わらない)に歩く後ろ姿が映されます。沙弥香は「今はまだこのままで」と述べていますが、これからどうなるのかは注目ですね。

 



以上が7話の考察になります。何度見ても新しい発見がありますし、最新話を見てから見返すとまた違った演出に見えるシーンもあります。今後感想なども含めて加筆するかもしれません。

 

やが君を制作して下さったスタッフの方と仲谷先生に感謝です。

また、長々と読んで下さった方、ありがとうございました!