やが君 考察

やがて君になる (アニメ)の考察ブログです!

やがて君になる 11話 考察 感想 ―燈子の沈黙、沙弥香の一歩―

この記事は、やがて君になる11話の感想・考察です。11話では、燈子にとってあまりにも衝撃的な事実の判明や、沙弥香の踏み込む姿が印象的でした!

(※アニメのネタバレ有です!アニメ最新話までの内容を含むので、未視聴の方は先に視聴することを強くお勧めします。)

 

燈子の姉と七海澪

11話では、燈子にとってあまりにも衝撃的な事実が判明しました。それは、燈子の思っていた「お姉ちゃん」と市ヶ谷さん達から見た「七海澪」が全く別の人物像であったことです。市ヶ谷さんは燈子に対して「澪と七海さんはあんまり似てないな」とまで言っています(爆弾発言ですよ市ヶ谷さん!!笑)。

これは、燈子にとっては自分の存在意義が無くなるほど致命的なことです。燈子は本来の自分には「何もない」と思っていますから…。


市ヶ谷さんとの会話のシーンではいくつか印象的な演出がありました。

まず、燈子が歩いている道にかかる影の演出です。これは、自分の進むべき道が分からなくなってしまい、先が真っ暗になってしまった燈子の状況を示していると感じました。

加えて、偶然かもしれませんがその後のシーンでも燈子の目の前の道がカーブしていて先が見えない構図になっていました。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

次に、蝉の演出です。市ヶ谷さんに「君のほうが立派に生徒会長してるよ」と言われた時に燈子は悔しさから歯を食いしばります。その次の瞬間、蝉は燈子を恐れるようにどこかへ飛び去ってしまいます。この演出により、燈子の憤りや悔しさの強さを強調していると思いました。

自分が今までずっと、あれほど必死に演じてきた「お姉ちゃん」は一体なんだったんだという燈子の憤りは凄まじいものだと思います。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​


沙弥香の一歩

11話では燈子の衝撃が大きな出来事ですが、個人的にそれ以上に驚いたのが沙弥香の踏み込んだ姿です。7話のコーヒーの考察記事でも述べた通り、 沙弥香は今まで自分の思いを飲み込み相手には踏み込まない人物でした。

少なくとも7話の時点では燈子に対して踏み込まず、このままでいいという心境でした。そのこともあったので11話で沙弥香が燈子に踏み込んだことはとても衝撃的でした。そのため、冗長になりますが少し丁寧に見ていきたいと思います。

沙弥香が燈子に踏み込んだシーンを確認します。燈子はこの時点で侑や沙弥香から見て明らかなくらい落ち込んでおり、沙弥香はそれを見て線香花火に誘います。1年男子が離れているとはいえ、燈子が人前であからさまに落ち込むということは滅多にないことだと思います(普段は完璧を演じているため)。これだけでも燈子がとても大きなショックを受けていることが分かります。

 

ちなみに、燈子が落ち込んでいるときに見つめている先は恐らくです。しかし、侑に対しては「優しさを使い尽くしてしまうのが怖い」と感じています。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

線香花火をしながら、沙弥香は「どうかしたの?」と燈子に問いかけます。しかし燈子は「別に…」といつものように本心は話しません。いつもならここで沙弥香は「そう。」というところですよね。しかし、今回は「市ヶ谷さんと何か話してたの?」と続けます。ここで沙弥香の動揺により線香花火が落ちる演出が入ります。


これでもなお沈黙を続ける燈子。そして沙弥香は、「市ヶ谷さんって…」と言いかけて止まります。

この時、沙弥香は心の中でかなり葛藤していたのだと思います。沙弥香は、燈子との今の関係が壊れてしまうことを7話であれだけ恐れていました。

侑とは違って沙弥香は過去に好きな人と別れる経験をしています。好きな人を失う辛さを知っている沙弥香は、侑以上に臆病になってしまうのではないでしょうか。

それでも沙弥香は「市ヶ谷さんって生徒会のOBだって聞いたわ」「燈子のお姉さんの話?」と燈子に問いかけます。沙弥香は恐怖を感じながらも、一歩踏み出すことを選んだんですね。今までの沙弥香とは明らかに違う行動です。この時、燈子も目を見開いて驚きます。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

沙弥香が不安な表情をする中、ついに燈子が沙弥香に対して本心を打ち明けます。これは、燈子にとっても初めて沙弥香に本心を打ち明ける場面だと思います。

そのあと燈子は「沙弥香知ってたの 姉のこと」と問いかけます。沙弥香からしたらとても恐い場面です。沙弥香は「ごめん」と謝ります。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

沙弥香「ごめん」


緊張が続く中、燈子は「沙弥香ならいいよ」「心配してくれてありがと」と返します。ここでの燈子の言葉は明らかに普段とは別のトーンでした。この言葉は、演じている七海燈子ではなく、「本来の彼女」の言葉なのではないでしょうか。沙弥香はこの言葉を聞いて驚きつつ、安堵と嬉しさで微笑みます。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

そして沙弥香と燈子を見た侑は…。侑から見ると、「なんで燈子先輩は私を頼ってくれないの」という気持ちですよね。燈子が頼ってくれない理由も分からないのでなおさらです。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



少し冗長になりましたが、ここまでの2つの見出しで①市ヶ谷さんの言葉により燈子に変化②燈子の変化による沙弥香の変化③沙弥香の変化による侑の変化という流れについて述べたつもりです。

 

沙弥香が踏み出した理由

最後に、沙弥香がなぜ11話で燈子に踏み込んだのかが疑問だったので取り上げます。いろいろ考えたのですが、筆者としては燈子のあまりに落ち込んだ姿を見て踏み込もうと決めた」のだと思います。

今回沙弥香が踏み込んだ話題は、燈子の不安を和らげる意味こそありますが、沙弥香の特別な想いを伝えられるわけではありません。一方で、沙弥香からすれば燈子に嫌われるという大きなリスクがありました。

それにも関わらず沙弥香が踏み込んだのは、やはり燈子を助けたいという思いが強かったからではないでしょうか。自分の好意を伝える時は思いとどまったのに、燈子が辛い思いをしている時は踏み込んだってことですね…。侑もとても優しい人物ですが、沙弥香もまたとても優しい心の持ち主だと感じました。

そして、今回の沙弥香の踏み込む姿は侑と少し似ていると思いました。もちろん、侑の行動と沙弥香の行動では心のハードルが全然違うと思います。何しろ侑は、6話の時点で燈子に対して「ほんとはさみしいくせに!」と思い切り踏み込んでいます。強すぎる後輩です笑
ただ、沙弥香が侑に似た行動をしたことは確かであり、これはお互いに影響しあっているのかなと思いました。

 

三角形の重心

Aパートのタイトルは、三角形の重心です。数学における三角形の重心は、三角形の3本の中線が交わる点のことです。そのまま解釈すると三角形は燈子、侑、沙弥香の関係を示していると考えられます。その重心というタイトルの意味について、今回は2つの解釈を考えました。①合宿時点での3人の関係 ②重心=劇という解釈です。

 

①合宿時点での3人の関係

一つ目の解釈は、シンプルに合宿時点での3人の微妙な距離感を示しているというものです。3人で寝るシーンが分かりやすいですが、合宿ではそれぞれ今の距離感を保とうとしています。

この少しずれたらすべて壊れてしまうような微妙な距離感重心というタイトルで表しているのではないでしょうか。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

②重心=劇

二つ目の解釈は、3人の交点がだというものです。この解釈は、8話考察記事で述べた8話タイトル「交点」の考察とも関連しています。

6話で燈子が語っていたように、燈子にとって劇は姉のやり残したことであり、代わりに自分が成功させようとしています。

その一方で、侑と沙弥香は燈子がこのまま完璧を演じ続けることをよく思っていません。侑と沙弥香は燈子が無理をしている状態だと分かっているからです。

加えて沙弥香は、今の燈子は人の好意を受け入れるだけの余裕がないと思っており気持ちを伝えることをためらっています。沙弥香は、燈子に姉の代わりを目指して欲しくはないのだと思います。

Aパートのラストでは、劇を成功させようという燈子と市ヶ谷さんの会話を聞き、思いつめた表情をする沙弥香が描写されます。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



これらのことから、3人のそれぞれの思惑が交差する点として劇という重心があるのではないでしょうか(今更ですが、8話の「交点」で横断歩道や交差点が出てきたのは、「交差する点」を示していたのかもしれません)。

 

導火

 Bパートのタイトルは導火です。導火とは火薬に火をつける口火のことで、転じて物事が起こるきっかけを示す言葉でもあります。

11話における物事のきっかけと言えば市ヶ谷さんの爆弾発言でしょう!笑 口火というにはあまりにも衝撃が大きかったですが…。この言葉により、燈子にとって今までの努力が無意味も同然となってしまいました。

 

しかし、連鎖的に沙弥香や侑にも変化が起き始めました。沙弥香は燈子に対して踏み込むようになり、燈子は沙弥香に自分の気持ちを打ち明けます。そして侑はそれを見て嫉妬します。燈子が中心で沙弥香と侑が振り回されるという構図がまさに燈子らしいですよね。

この、

①市ヶ谷さんの言葉により燈子に変化

②燈子の変化による沙弥香の変化

③沙弥香の変化による侑の変化

という連鎖のきっかけ(市ヶ谷さんの爆弾発言)が「導火」だと考えられます。

ただ、導火というタイトルが浮かぶシーンがもう一つありました。それは、燈子が沙弥香に「いいよ」と伝えた場面です。この場面では、線香花火瞬火花が散る演出が入ります。

もしかすると、燈子の心が変化するきっかけという意味では沙弥香の行動が最も重要な「導火」だったのかもしれません。もちろん、この場合も元は市ヶ谷さんの言葉が原因ではあります。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



他の方のブログ紹介

最後に他のブロガーさんの紹介です。

いつも紹介させていただいているゆっちーさんです。蝉の鳴き声の描写や、燈子の「沙弥香ならいいよ」という言葉の考察が見事です!

www.anime-kousatsu.com


続いてづかさんの記事を紹介させていただきます。今回もまた独特な視点の考察をされています。特に、「視線」に注目した重心や侑の心情についての考察が斬新でした!

zuka-poke.hatenablog.com

 

以上が11話の考察・感想になります。今回は特に沙弥香が踏み込んだ点が印象的でした。物語としては、市ヶ谷さんの爆弾発言により燈子にとって大きな問題が起こりました。それに伴い沙弥香や侑にも大きな変化が表れています。まさに燈子は台風の目ですね(笑)。この状況から3人が幸せになることはあるのでしょうか。いよいよ残すところあと2話となりましたが、心して注目しようと思います。

そして、ここまで読んでくださった方ありがとうございました!