やが君 考察

やがて君になる (アニメ)の考察ブログです!

やがて君になる 10話 考察 感想 ―言葉にならない確かな気持ち―

この記事は、やがて君になる10話の感想・考察です。10話では、侑と燈子のすれ違いやドーナツによる描写が特に印象的でした!(※アニメのネタバレ有です!アニメ最新話までの内容を含むので、未視聴の方は先に視聴することを強くお勧めします。)

 

 

すれ違う2人の気持ち

10話全体を通して、侑と燈子の気持ちのすれ違いが明確に描かれています。すべて取り上げることは難しいのですが、特に印象的なシーンについて述べます。考察というより解説になりますが、後述の考察で触れるので先に述べます。

 

まず、ドーナツ屋さんでのシーンです。ここでは、侑に嫌われたくないという燈子の気持ちと、燈子ともっと近づきたいという侑の気持ちが見事にすれ違っています。「侑に嫌われたくないから」と話す燈子に対し、侑は「べつにそんなの」とまで言って言葉を紡ぐことができず、「…まあ いいことだと思いますけど」とつぶやきます。たった一言、燈子ともっと近づきたいという言葉が伝えられませんでした。

燈子「合宿に限らずもうちょっと抑えなきゃと思ったの 侑に嫌われたくないから」

「べつにそんなの」「…まあ いいことだと思いますけど」

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 この後「先輩 燈子先輩」と侑の声が聞こえますが、燈子は反応していないのでモノローグでしょう。また、燈子は「とうこ せんぱい」と侑が言った瞬間に左手で耳をふさいでいるような描写になっています。これは、侑の好意は受け付けないということを示しているのではないでしょうか。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

Bパートでは、侑と燈子が電話をするシーンが描写されました。ここでは、2人のモノローグが見事に対照的なものとなっています。燈子はモノローグで「侑は私が何をしてもしなくても きっと本当のところで興味なんかないんだ」と述べています。


一方で、侑は燈子の思いとは裏腹に「先輩と話すとざわざわする」と感じています。ここでも見事にすれ違っていますね。そして最後に、「もう どうでもよくなんかないよ」と燈子に話します。このセリフは、侑の本心からでた言葉です。侑にとって、燈子との何気ない会話一つひとつが「どうでもよくなんかない」存在に変わっているのだと思います。侑から見れば嬉しいことでもあり、この先が恐いところでもありますね。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 「もう どうでもよくなんかないよ」

 

ドーナツの描写と侑の「ずるい」

上の文でも触れましたが、Aパートでは侑と燈子がドーナツ屋さんで勉強会をするシーンがあります。この部分のドーナツの描写についての考察です。


まず、残りのドーナツで侑も食べたかった方を燈子が独り占めしてしまうシーンは、燈子だけが特別な気持ちを求められる(味わえる)ことを示しているように思います。侑の「わたしもそっちがよかったのに」というセリフは、「わたしも自分の想いを伝えたい」といっているようにも聞こえます。

そして侑の本心が垣間見える「ずるい」というセリフ。これは、「特別」を独り占めする燈子に対しての「ずるい」だったのではないかと思います。普段は淡々としゃべる侑とは対照的に、とても感情のこもったセリフでした(声優さんってすごいです)。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

「ずるい」 

 

ちなみに、侑は最後に自分が好きじゃないほうのチョコレートドーナツを食べています。これは、沙弥香のコーヒーの時と同じく苦い気持ちを飲み込むということを示しているのではないでしょうか。確認してみると、複数あるドーナツの中でチョコレートドーナツ(苦いもの)は一つしか見当たらず、燈子は一つも食べていませんでした。燈子は甘いドーナツのみ食べていたことになります。ほんと燈子ってずるいですね…!笑

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

そして、飲み物に注目してみると、侑の頼んだものはアイスコーヒーのように見えます。侑って、あんまりコーヒーを飲むイメージがないんですよね。ここでコーヒーを頼んでいるのは、沙弥香と同じく苦い気持ちを飲み込む場面だからではないでしょうか。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

 

私未満/昼の星/逃げ水

 

私未満

 「私未満」というタイトルは、燈子の自己否定的な心境を示していると思います。こよみの書いた原稿でも示されていますが、燈子は「何もない少女」の役です。燈子は完璧を演じない本来の自分のことを「何もない」と表現しており、だからこそ姉を演じることで自分に意味を持たせようと考えています。この、私には何もないということを違った表現で示したのが「私未満」です。誰でもないわたし(燈子)は「私」に満たない存在、ということだと思います。燈子は、過去の出来事から自分が本当に嫌いになってしまったんですね。

 

Cパートでは、燈子がアバンで話していた「夢の話」が描写されます。沙弥香の言うように、燈子は今もこの記憶を何度も思い出し「自分なんかのせいで」と許せない気持ちになっているのではないでしょうか。だからこそ、短冊でも生徒会劇の成功を何よりも願っているのですね。

 

アニメ3話で燈子は侑に「君はいつも私を許してくれるね」と言っていましたが、10話を見た後だと「許す」という言葉の意味がまた重みを増しているように感じます。ただ、この問題は侑や他の誰かではなく燈子自身が自分を許すことができなければ前に進めないようにも思います。とても難しい問題ですね…。

 

昼の星

Aパートのタイトルの1つは「昼の星」です。ここでいう星は、侑の燈子への特別な感情のことを指していると思います。10話では、ドーナツ屋さんのシーンで侑の気持ちがとして描写されていました。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

ここで重要なことは、昼の星は見えないのですが確かに存在しているということです。いくら侑が特別な気持ちを隠したとしても、確かにそこに星(特別な気持ち)があるということを表していると思います。白紙のまま飾られた短冊にも、見えないだけで確かに願いが込められています。願いがなければ、わざわざ飾ったりはしませんよね…。握りしめられた短冊は、侑の締めつけられる心を表しているように感じます。この白紙の短冊の願いについては、視聴者が自由に想像できますね。色々な予想ができる部分ですが、筆者は「燈子先輩と恋人になれますように」という誰もが考える願い事をしたと思いました。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

ちなみに、OP考察の記事でも述べましたがOPの最後に表れる星や2人を示す花についてもう一度触れておきます。このシーンの星が集まった線は、10話で七夕が出てきたことからもやはり天の川だと思います。そして、ラストの2人のいた場所に表れた花は、織姫彦星と対応しているように思います。ただ心配なのは、織姫と彦星は離れ離れになってしまうということですね…。しかし、描写的にはかなり2人(2つの花)の距離は近いので、杞憂かもしれません。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​




逃げ水

Bパートのタイトルは「逃げ水」です。このタイトルは個人的に解釈が難しく、説得力に欠けるかもしれませんが一応筆者の解釈を述べます。「逃げ水」とは夏の日などにアスファルト上に水たまりがあるように見える現象のことです。実際には水は存在せず、近づいても逃げるように見えることから逃げ水と呼ばれます。このことから、「逃げ水」というタイトルについて2つの解釈を考えました。①侑の燈子に対する好意②燈子から見た侑の気持ちです。

まず一つ目の解釈についてですが、逃げ水「侑の燈子に対する好意」を示していると感じました。以前OP考察の記事でも述べたのですが、侑の特別な気持ちを象徴していると考えられます。加えて、侑は燈子に対して好意を自覚していますが、近づこうとすればするほど、燈子は侑から遠ざかってしまいます。これは、8話で侑が「嬉しい」と言った時に燈子が拒否反応を示したことからも明らかです。この状況を示しているのが「逃げ水」というタイトルなのではないでしょうか。

 

次に、②燈子から見た侑の気持ちという解釈についてです。侑と燈子が電話をするシーンで、燈子は侑に対して「きっと本当のところで興味なんかないんだ」と考えています。燈子にとって、「侑の燈子に対する好意」近づいても近づいてもたどり着くことのない実際には存在しないものです。このことを示したのが「逃げ水」というタイトルという解釈です。

 

2つの解釈を述べましたが、重要なポイントとして「昼の星」「逃げ水」が対照的なタイトルということが挙げられます。昼の星は「目には見えないけれど確かに存在する」ものであり、逃げ水は「目には見えるけれど実際には存在しないもの」です。そして、昼の星は確かに存在し、逃げ水は人の錯覚であるという点も重要です。侑と燈子は「侑の燈子に対する好意」隠したり存在しないものとしていますが、それはあくまでも錯覚だと考えられます。実際には目には見えずとも星(侑の特別な想い)は確かにあるということが2つのタイトルが示していることではないでしょうか。

 

他の方のブログ紹介

最後に、筆者が紹介したいと思うブロガーさんについてです。

前回に引き続きゆっちーさんの記事を紹介いたします。すれ違いの考察は同じ部分もありますね。特に印象的だったのは「もう どうでもよくなんかないよ」という侑の気持ちを詳しく考察されている部分で、説得力のある記事でした!

www.anime-kousatsu.com

また、ゆっちーさんの記事で触れておきたいコメントがあったので引用させていただきます。
NFさんのコメントです。

残った2つのドーナツで、 燈子には物事をじゃんけんで選ぶことはできなくなっているのではないでしょうか?
「じゃんけんで決めよう」それを避けるために即決する。

このコメントを読んでとても腑に落ちました。普通の流れであれば、おそらくジャンケンで決めますよね…。燈子はそれを避けるためにもすぐにドーナツを食べたのかもしれません。やはり他の方のコメントや意見で新しい視点が生まれるのは面白いです。

次にづかさんの記事を紹介いたします。また斬新な視点の考察をされています…!特に、入道雲クリオネの考察がとても面白かったです!

zuka-poke.hatenablog.com

 

以上が10話の考察・感想になります。 

今回は特に「逃げ水」というタイトルの解釈が難しかったのですが、もしよろしければその点についてコメントなどをもらえるとありがたいです(あまり整理できていないように感じるので)。

10話は記事にまとめるのが難しい回でしたので、今後また修正するかもしれません。


そして、ここまで読んでくださった方ありがとうございました!