やが君 考察

やがて君になる (アニメ)の考察ブログです!

やがて君になる 13話 考察 感想 ―やが君にありがとう―

この記事はやがて君になる13話の考察・感想です。ついに迎えた最終回。言いたいことが多すぎるのでまずはひと言。今はただ、感謝の気持ちでいっぱいです。

(※アニメのネタバレ有です!アニメ最終回までの内容を含むので、未視聴の方は先に視聴することを強くお勧めします。)

 

始めに

 ついに最終回となりました。もはやただ感謝しかありません。この記事だけであと何回感謝と言うか分かりません(笑)が、心からの想いです。やが君の「真髄」が見えた最終話にふさわしい神回でした!簡単に神回とか言わないでくれという気持ちも分かるので、なぜ神回と感じたか考察で述べさせていただきます。

ちなみに今回は色々な解釈ができるので、わざとTwitterや他の方の考察を全く見ないようにして記事を書きました。個人的には、これで他の方と同じ結論になっていたり違う結論になったとしてもとても面白いと思います!

今回の記事はまず13話の考察として①「燈子の光と影」②「侑の導き」について述べます。そしていつもの③「タイトル考察」をしたのち、④「終わりに」を述べて結びとさせていただきます。

 

燈子の光と影

13話では、燈子の光と影について対照的に描写されました。は燈子の中にある悲しい過去です。光は燈子の内なる光に加え、侑という燈子を外から照らす光があります。


燈子の影と3つの選択

まず影の描写です。燈子にとってのは、姉を失ってしまった過去と自分に対するの意識です。この罪の意識から、燈子は本来の自分(≠演じている燈子)に価値を見出せなくなり、償いとして姉の代わりとなることでしか自分の存在価値を認められません。

ここでキーとなるのは「3つの選択」です。生徒会劇の中で少女は3つの自分の中から選びます。この選択をすること自体が本来の彼女を完全に消し去る行為であり、現実世界の燈子にとっての償いです。13話では3という数字の概念すら情景描写で魅せてくれました。例えば、お墓のシーンでは3方向から燈子の姿が映されます。この後に述べる1人で電車を待つシーンも3方向からのカットです。加えて、侑と劇の練習をする場面でも物の数で「3」が示されています。素晴らしすぎる表現です!

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



ここでさらに注目していただきたいのが、「3つの選択」という燈子の償いに対して罪としての「3つの選択」があることです。罪としての「3つの選択」とはあのジャンケンのことです。ジャンケンは、燈子にとって罪の塊です。

10話の考察記事で燈子はジャンケンで決めさせないためにドーナツを早く取ったというコメントを紹介しました。

yagakimi.hatenablog.jp

おそらくジャンケンは燈子にとってのトラウマでありこの罪を劇の「3つの選択」で元の自分を消すという形で償おうとしているのだと思います。一体どれだけ本来の自分を傷つけるのでしょうか…。

燈子の光

燈子にとってのは2つあると考えています。1つは燈子自身の中にある光。2つ目は侑という光の存在です。

燈子の中にある光は、本来の燈子が持っている魅力です。サブタイトルの考察とも重なりますが、完璧を演じていたはずの彼女はいつしか周りの人々を照らす灯台となっていました。実際、侑の心の光を灯したのは燈子です。ただ、彼女は自分の光には全く気づいていない、というよりむしろ見えないように目を塞いでいるといったところでしょうか。

一方で、外なる光である侑の存在はしっかりと目にしています。電車を待っている場面では、燈子の顔にかかる光と影の描写がありました。侑の存在によって光の部分が増え、顔が光に照らされる演出はまさにやが君らしい演出です。この部分は前に述べた3方向からのカットにもなっています。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

(右画像は侑の存在により光の部分が増している)

 

侑の導き

次は、影のかかった燈子を照らす光「侑」についてです。前回12話で侑の取った選択は「先輩を変える」でした。13話では、燈子を暗い深海から明るい海へ導く侑の姿が描写されます。水族館の演出は、本当に美しいシーンばかりで気が付けば息もできませんでした。

 

光輝く海へ

 これまで、アニメやが君では1話から一貫してが心情描写として用いられてきました。例えば、1話の時点では特別な気持ちが分からない比喩として深海の表現がありました。また、リレーのシーンで特別を知った9話では深海とは異なるキラキラした海の描写がありました。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 (左が1話の深海、右が9話のきらめく海)

13話では、2つの海が対照的に描かれました。1つは燈子の暗い海、2つ目は侑が導いた明るく温かい海です。

 

まずは燈子の海に関してです。即興劇を終えた場面では燈子が暗い海に残され、侑が明るい舞台へ行き離れてしまう演出がありました。これは、離れ離れになり1人残される燈子の孤独な心境を表しています。1人残されるというのは姉を失い孤独になった燈子のトラウマです。1話の侑の孤独な心境も深海で表現したように、暗い海は孤独を演出しています。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



しかしここで重要なのが、侑は燈子の方へ振り向くということです。そして、燈子の伸ばす手を掴みました。いえ、直接的な描写上はここで手を掴んではないのですが明らかに侑は燈子に手を伸ばしました。燈子の驚いた表情から、侑が手を掴んでくれた感覚を得たのだと思います。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

この侑が燈子の手を掴んだという演出は、暗い海で孤独になっている本来の燈子を侑が明るい世界へ連れ出すことを示していると思います。ここから13話怒涛のやが君演出が展開されます。この1カットも無駄にしない感じが最高にやが君です!

続くシーンでは、水族館の水槽の前で行き場を見失う燈子を侑が導きます。まず、注目したいのが水槽の「仕切り」です。7話の考察記事では、窓の仕切りによって置かれている関係を表していました。

yagakimi.hatenablog.jp



13話の水槽の仕切りは、燈子の暗い過去と明るい未来の境界線に対応していると思います(左画像)。画面の右側が暗い過去、左側が明るい未来です。燈子はどこへ向かったらいいか分からず、暗い右側へ進もうとしてしまいます(中央画像)。しかし侑がここで手を掴みます!(侑ーーーー!!!)素直に感動しました…。燈子が暗い過去へ向かおうとしているところを、侑が引き留めたんですね。さっき燈子が感じた「手を掴んでくれた感覚」が嘘ではないと、侑が証明してくれました。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​



侑に手を引かれる場面では、燈子の後ろが暗闇となっています。これは燈子視点の視界を示しています。恐らく、燈子の視点ではもうすでに全く周りが見えない暗闇の状況なのだと思います。だから、どこへ進んでいるのか分からず暗い過去へ行こうとしてしまった。でも、侑が過去と未来の境界を超え明るい場所へ導いてくれました…。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

ここの挿入歌「好き、以外の言葉で」はED曲「hectopascal」のCDに入っています。筆者も購入しておりCメロの部分が大変好きだったのですが、まさかここで使われるとは…。もはや感謝しかありません。

 
13話で登場する2つ目の海は、温かく光輝く海です。今までの海の描写の中で最もに満ち、生き物もいる素敵な海ですね。この光は2人にとっての特別な気持ちを示しています。2人の伸ばした手も特別な光に届いていますね。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

歩いている途中、燈子は侑の手をしっかりと握りしめます(下画像)。「この手を離さないで」と。それを受けて侑はとても切ない表情をしています。続く、言葉にされないモノローグは2人の特別な気持ちからでたものですね。ここは解説するのが無粋な気がするくらい美しい表現でしたので、本編を参照していただければ。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 


陽だまりの中で

最後の電車のシーンでは、侑が劇のタイトルを入力します。タイトル案は『君しか知らない』。これは、即興劇で侑が述べていた部分です。侑が言っていたのは、侑や沙弥香たちは出会ってからの燈子しか知らないけどあなたの好きなものやくせを知っているということです。『君しか知らない』の「君」は本来の燈子のことを指していると思います。

ポイントは好きな花の色や小説は、燈子がお姉ちゃんから聞いたものではないという点です。8話で侑は燈子から直接好きな紫陽花の色を聞いていませんでしたが、やはり沙弥香から聞いていたのですね。燈子が侑が好きな気持ちと同様に、これらは本来の燈子の気持ちですよね。侑は本来の君(燈子)しか知らない、自分が見ているのはお姉さんじゃないよと言っていると思います。

電車のシーンのラストでは、燈子が侑にもたれて寝てしまいます。この場面でもまた「仕切り」が描写されていますね。ここでも仕切りという境界線上の位置から侑のいる場所へ向かっています。そして、背景の色がまた綺麗ですよね。いつもとは少し違った黄色の光。この鮮やかな黄色から筆者は「幸せ」を連想しました。やが君は色彩にもそれぞれ意味が込められていますね。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

 この後の、一瞬ためらいながらもこれまでとは違い燈子の手を握る侑の姿も感慨深いシーンです。

 

 

灯台

13話のタイトルの1つは灯台です。これは、海を照らす灯台であり燈子のことを示していると思います。理由についていくつかあるので述べます。

1つ目の理由としては、「燈子」という名前です。以前の記事にも述べましたが、「燈」には灯り(あかり)という意味があります。完璧を演じていた燈子は意図せずとも周囲の沙弥香や侑の心に光を灯しました。そして、これまで侑の心は水や海を用いて演出されてきました。海を照らすという意味での灯台。これほど燈子にぴったりな言葉はないと思いました。

2つ目の理由として、灯台もと暗し」という言葉も挙げられます。本来のこの言葉の灯台は燭台(ロウソク立て)ですが、海の灯台にも考え方は当てはまります。灯台の足元に光は差さないですし、自分が光を発していることも灯台には分かりませんよね。この状況は、水槽のシーンで燈子が暗闇の中行き場を見失ってしまう描写と一致しています。燈子の光によって侑の心に明かりが灯り、その光によって今度は燈子が導かれました。

このように、「灯台」とは燈子のことを指しているのだと思いました。

 

 

終着駅まで

最後のタイトル考察です。13話では燈子が電車に乗るシーンが2回ありますが、1人で乗る場面と侑と2人で乗る場面が対照的に描かれています。

1回目は沙弥香と会った帰りです。この時乗った電車は「終点まで先着」です。これは、終着駅まで「乗り換え」をしない電車です。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

 

ここで重要な解釈として「乗り換え」は演じている燈子が本来の自分へ乗り換えることを示していると思います。つまり、終着駅まで乗り換えをしないということは最後まで演じたままということになります。だから燈子1人で乗る電車は「終点まで先着」なのでしょう。しかし、この後の描写でこの電車が行き着く先は恐らく「死」なのではないかと思わされました。ぞっとすることに向かいの電車が通る際、燈子が一歩前へ踏み出していたのです…。まるで、お姉ちゃんのあとを追うように。冒頭で蝉の羽が落ちていたのも思い出しました。お姉ちゃんになるって、そういうことだったのでしょうか…。そんなの嘘ですよね?

ここまでだと絶望感が凄まじいですが、2回目の電車の描写がありました。最後に侑と共に乗る場面です。この電車の最後のシーンで侑が伝えた言葉を思い出しましょう。

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 ​

侑「先輩、そろそろ乗り換えですよ。」

うわあああああ!取り乱してすみません。しかし少なくとも13話では、侑は燈子を救いました。寝ていて乗り換えられない燈子(過去に縛られて起きない燈子)を起こし乗り換えですよ、と。こちらの電車の行き先はまだ分かりませんが、少なくとも「死」ではないことは確かだと信じています。

このことも踏まえ、この場面の侑のセリフはやはり含みのある表現に聞こえます。「このまま、起こさないのも悪くなさそうだけど」「先輩、そろそろ乗り換えですよ」というセリフです。

これは「このまま今の燈子と寄り添う関係でいるのも心地がいいけれど」、やはり「元の自分を嫌う燈子の気持ちを変えたい」ということではないでしょうか。燈子に頼られ、特別な気持ちを知ることができた今の状況を手放す危険があっても、侑は燈子を変えることを選んだんですね。やっぱり助けるという名前の意味の通り、「侑」は優しい人物でした。
このように、「終着駅まで」とは燈子の心境や行く末を示したタイトルだと思います。

今までたくさんのタイトル考察をしてきましたが、この「終着駅まで」が今までで一番侑の力で燈子の運命が動いた部分だと感じました。

 

 

終わりに

ついに13話が終わりました。最終回だなんて嘘ですよね?って思いたくなるくらい、人生で一番考察して心から楽しませてもらった作品となりました。

まずは皆さんに感謝を。素晴らしい表現で毎回驚かせてくださったアニメスタッフの方々、編集者のクスノキさん、そして仲谷先生本当にありがとうございました!
また、考察するきっかけを与えてくれたゆっちーさんやづかさん、コメントを下さった方々も本当にありがとうございます!

ここで、先ほど感謝を述べたゆっちーさんとづかさんのブログを紹介いたします。

ゆっちーさんは原作未読でありながらすさまじい考察をされており、筆者が考察を書くきっかけとなった方です!

www.anime-kousatsu.com


づかさんはいつも自由な発想に驚かされます。自分にはない視点でタフな考察をされています!

zuka-poke.hatenablog.com

以上がブログ紹介になります。


正直、やが君の続きをアニメ2期で見てみたいという気持ちでいっぱいです。そのこともあって微力ながら私もBlu-rayを全巻購入させていただいています(誠に勝手ながら制作会社さんへの感謝からTROYCAで予約してます)。
普段は商品のおすすめはしないのですが、最後に公式サイトの映像商品へのリンクを貼っておきます。

yagakimi.com




あの光や水、指先などを用いた空間演出・心情描写が見れなくなると本当に寂しいですが、ここまで作品を好きになれて幸せでした。

アニメはいったん終了になりますが、原作は続いているので私もまずは読み止めていたコミックの続きから読もうと思います。

それでは今後も何か書くかもしれませんが、ここで一度終わりにしようと思います。
今まで本当にありがとうございました!