やがて君になる12話 考察 感想 ―特別に届いた侑の選択―
この記事はやがて君になる12話の考察・感想です。ついに侑が走り出しました!タイトルや挿入曲も含めて、素晴らしい回だったと思います。それゆえに書きたいことが山ほどありますが、膨大な量になるので特に取り上げたい部分について言及します。
(※アニメのネタバレ有です!アニメ最新話までの内容を含むので、未視聴の方は先に視聴することを強くお勧めします。)
気が付けば息もできない
12話のタイトルは「気が付けば息もできない」です。私は息ができない場所として、①宇宙と②海中を連想しました。
この2つの場所は侑が特別を知りつつも身動きの取れないという相反する2つの状態を示しています。
①「気が付けば宇宙(そら)の中に」
12話のタイトルを象徴する場面はラストのプラネタリウムの光のシーンです。
過去の記事でも述べましたが、キラキラした虹色の光は侑の「特別」な気持ちを表しています。以前の侑は、この特別な光(プラネタリウムの星)に届かないでいました。
3話の「まだ大気圏」ではプラネタリウムの星に手が届かず、特別な気持ちに触れられない侑が描写されています。この天井に星が映された3話「まだ大気圏」とは対照的な形で、12話では侑はプラネタリウムを手に持ち、星の光を浴びています。
これは「大気圏」という空から宇宙(そら)へと飛び立ち、輝く星たちと共にある(=特別な感情に届いた)ということだと思います。
侑が「特別」な気持ちに届き、息もできない場所(宇宙)へ到達したことを示したのが「気が付けば息もできない」だと考えられます。
OPのプラネタリウムの場面は、3話ではなく12話のシーンだったのですね。侑が星の光を浴びているので、「特別」に届いた場面だと分かります。
②「気が付けば海の中に」
この解釈を象徴するシーンは侑の部屋の場面です。侑が特別な光に届いた一方で、燈子は侑の好意を拒否します。「侑は私のこと好きにならないでね?」と。これは、宇宙へと飛び立った侑を、海中へ引き戻す言葉です。
燈子の「私のままの私に何の意味があるの」という問いかけに対して侑は「…先輩は」と答えようとしますが、燈子はキスで侑の言葉を奪います。このシーンは燈子のキスにより侑が息ができない(身動きが取れない)ことを表していると思います。侑の続きの言葉は燈子への好意を示してしまうので、言えなかったし言わせてくれなかったのでしょう。
侑 「先輩は…」
この、燈子の拒否によって宇宙から海中(星の光の届かない場所)へ引き戻されてしまう状況を示したのが「気が付けば息もできない」という解釈もできます。海と宇宙、どちらも同じ「息もできない」場所ですが、侑にとっての意味合いは全く違うものとなっていますね。
ついに届いた「特別」
ついに特別な光を掴めた侑…。12話では、侑が「特別」に届いたことを示す描写があります。今までの侑を考えながら見ると、どれも非常に感慨深いシーンです。
①踏切の光
12話ともなると、やが君の中で踏切が特別な場所ということはおなじみですね。このシーンでは、侑が踏切を見たことで燈子との「特別な思い出」が回想されます。特別を示すキラキラとした光の演出は、息ができなくなってしまうほど綺麗でした!いつしか「何も感じない」と言っていた侑ですが、その思い出は今では鮮やかに色づいています。
②伝えられない「その言葉」
侑が家から帰る燈子を見送るシーンではモノローグで侑の本心が語られます。しかし、重要な「その言葉」は「ばか」という言葉にかき消されて聞こえません。ですが、確かに侑の気持ちは特別に届いています。
だからこそ、思い切り叫ぶほど想いがあふれているのでしょう。そして侑自身もそれをはっきりと自覚していることが描写されました。伝えられない「その言葉」、侑は燈子にしっかり伝えることができるのでしょうか。
走り出した侑
上の記事では12話における「侑が特別に届いたこと」「燈子が壁を作っていること」について述べたつもりです。この状況に対して、侑はアクションを起こします。この行動力は沙弥香とは対照的です。11話では沙弥香も勇気を出して踏み込みましたが、侑はさらに走り抜けます。
侑 「それでも、あの人を…七海先輩を!」
侑が走り出すこのシーン。胸が熱くなりますよね。燈子の作る壁に対して、侑のとった選択は「七海先輩を変える」でした。たとえ望まれていなくても、拒絶されようとも侑は走り出しました。
この場面ではバックに赤信号が出てきますが、侑は駆け抜けます。これは、燈子が止まれと言ってもなお突き進む侑の姿を表しているように感じました。
走り抜けてこよみの家に到着した侑。脚本の結末を変えたい理由を聞いた時、本当に心を動かされました。
侑「なのに、過去を基準にして結末を導くんじゃ…。まるでこの劇の時間に意味がなかったみたいだ。」
ここでいう劇の時間とは、侑や生徒会のメンバーが現実で過ごした燈子との時間のことと対応しています。現実世界においても、燈子は過去を基準にして結末を導こうとしています。侑と過ごした今までの時間も、まるで意味がないかのように。
しかし侑は、それが本当の燈子の意志ではないと言いました。そうであってほしくないという、侑の願いもあると思います。これまでの時間が無意味だなんて、切なすぎる結末です。だから侑は走り出しました。あとは燈子を変えるだけです…!
含みのある描写
ここでは、上記で取り上げられなかった含みのある描写に関して言及します。
①アイスが溶ける描写と「つめたい」
侑と燈子がキスをするシーンでは、アイスが溶ける描写があります。これは、侑の心が解けることの比喩だと感じました。合宿では距離を置かれこわばっていた気持ちがやわらいだのだと思います。
また、その後の「つめたい」は本当に声優さんの演技がすごかったです。この「つめたい」の意味はそのままの意味もあると思いますが、自分を嫌う燈子の心を冷たいと言っているようにも聞こえます。この場面の侑は優しくも少し憂いのある表情です。
燈子本人は含みに気づいてないと思いますが、「優しいね、侑は」という顔をしているので優しさを感じ取ったのかもしれません。そして、両者には陽だまりのような光の描写があり、特別な気持ちがあることを示しているように思います。
②十字路と「止まれ」
侑が燈子を家に誘う帰り道では、十字路に2人の影が重なるシーンがあります。これは、十字架のようにも見えました。十字架から私が連想したのは、「罪と赦し」「愛」や「苦難」などです。
燈子にとって過去の出来事は罪であり、侑はそれに対する許しを与える存在です。その一方で、侑は愛しい気持ちを持つことができず苦難と直面しています。この場面での侑の言葉からも苦難に耐えている様子が表れているように思います。
侑 「ちゃんと守ってるんだから、先輩も信じて下さい! わたしのこと。」
また、「止まれ」の標識が今回も描写されました。ここでの止まれの意味は、侑に対する燈子の止まれ(好きにならないで)を示しているように思いました。
他の方のブログ紹介
最後に、他の方のブログを紹介したいと思います。
まずはいつも紹介させていただいているゆっちーさんのブログです。
特筆すべきは、私が悲しみのあまり記事にすることができなかった(笑)侑と沙弥香の対比について見事に考察されています!本当に、一体沙弥香が何をしたというのでしょうか。
また、燈子と侑のキスシーンもとても丁寧に考察されています。大気圏の考察などは私の意見と重なるところもありました。
そしてづかさんのブログです。
プラネタリウムに関する考察もさることながら海、陸地、宇宙という3つの層で捉え「理想」と「現実」を対比させている点は大変面白くおすすめです!
以上が12話の考察・感想です。今までつらい場面が続きましたが、ついに侑が走り始めました!やはり燈子は望んでいなくとも、いつかは必ず向き合わなければならない問題だと思います。侑は燈子を変えることができるのでしょうか。
最終話は原作準拠のため、そのまま原作の続きが読める締め方だと思いますが楽しみに待ちましょう!
そして、ここまで読んでくださった方ありがとうございました!